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薬学×付箋ノートBOOK著者 くるみぱんの薬学ノートと日常メモ

第32回「飛蚊症」

目の前に黒い点やゴミのようものが浮かんでいるように見えたことはないでしょうか。最近は若い人にも増えてきている飛蚊症についてまとめました。

飛蚊症とは

浮遊物が見える症状のことです。その名前から想像できる蚊のようなものだけでなく、糸くずや気泡、カエルの卵、たばこの煙のようなものなどさまざまな見え方があります。

これらは、硝子体に濁りが生じることが原因で、それが網膜に映って浮遊物として見えます。ゼリー状の硝子体の中の濁りなので、眼球の動きとともに浮遊物も上下左右に動きます。また、暗い場所やごちゃごちゃした場所では目立ちにくく、白い壁や青空などを見たときに感じます。

 

原因

先ほど、硝子体に濁りが生じることが原因と言いましたが、では何が原因で濁りが生じるのでしょうか。

まず1番多いのは加齢による後部硝子体剥離です。硝子体は年齢とともに少しずつゼリー状から液状になって萎縮することで網膜から剥がれます。すると硝子体後方の膜が網膜に映って飛蚊症となるのです。後部硝子体剥離の好発年齢は60代前半です。

この他に、生まれつきの飛蚊症もあります。胎児のとき硝子体には血管が通っており、通常出生時には無くなっているものですが、稀に出生後も硝子体にその一部が残っている場合があります。それが濁りとなることもありますが、視力に問題がなければ心配ありません。

一方で、何かしらの疾患があり、その症状のひとつとして飛蚊症が現れている場合は注意が必要です。その疾患というのは網膜剥離や硝子体出血、ぶどう膜炎、血管新生緑内障、感染症などです。これらはいずれも早期治療が必要なので、飛蚊症だからと言って放置せず、すぐに眼科を受診しなければなりません。

網膜裂孔

飛蚊症の原因で1番多い後部硝子体剥離ですが、一気に全ての面が網膜から剥がれるわけではありません。剥がれている部分とくっついている部分がある状態のとき、癒着部の網膜が引っ張られて穴が開く場合があります。これを網膜裂孔と言います。この状態を放置していると、穴から液状の硝子体が流れ込み、網膜剥離になってしまう可能性があります。

網膜剥離に進行する場合、多くは3ヶ月以内に進行します。定期的に受診して、経過を診てもらうことが大切です。また、網膜剥離になると入院しての手術が必要になりますが、網膜裂孔の段階であれば外来でのレーザー治療も可能です。日頃から見え方に変化がないか確認して、異常を感じたら速やかに受診しましょう。

治療

加齢や生まれつきの生理的飛蚊症に対しての治療となる点眼薬はありません。何かしらの疾患によって飛蚊症の症状が出ている場合は、その疾患の治療が行われます。

飛蚊症だからといって自己判断で軽く見ずに、まずは受診することが大切ですね!

 

【参考】

日本眼科医会 黒いものが飛ぶ 飛蚊症(公益財団法人  日本眼科医会)