スポーツファーマシスト学習記録 |
第27回「新規禁止成分 ‟トラマドール”」
こんにちは。スポーツファーマシストのシトロンです。
冬が近づいてきましたね。
気付いたら街の雰囲気がクリスマス一色になっていました。
クリスマスが過ぎたら年越し、お正月…この時期はイベント満載。
そして今の時期忘れてはいけないのが
スポーツファーマシスト実務講習申し込み。
実務講習では来年1月1日からの禁止表改訂についての内容詳細を知ることができます。
この講習を受けないと資格を継続することができません。
申し込み期間がかなり短いので、今年資格取得された方は特にご注意ください。
禁止表は毎年1月1日に改訂されます。
その年によって内容変更の度合いは異なるのですが、来年から痛み止めの一種が禁止物質に含まれることになりました。
今回はそのお薬について、みなさんと情報共有できればと思っています。
普段薬学に触れていない一般の方や学生の方には少し難しい話になってしまうと思いますが、こんなこともあるのかと頭の片隅に入れていただければ幸いです。
では、早速ですが本題。
来年から禁止物質に分類される薬の成分名は「トラマドール」といいます。
これは医師の処方箋が必要な医療用医薬品で、整形外科などで痛み止めとして使用されます。
この成分は数年前から監視プログラムに登録されていました。
監視プログラムとは、スポーツにおいて濫用されているかどうかモニタリングが必要な成分を対象としたもので、現在だとニコチンやカフェインがこれに当たります。
そのモニタリングの中で、
- 自転車・ラグビー・サッカーで特に著しい使用状況があった
- 身体的薬物依存等の健康リスクがある
- スポーツにおいて身体的パフォーマンスを向上する可能性がある
これらが判明したため、来年2024年より競技会時に禁止することとなりました。
実は前々から禁止する動きはありました。
オリンピック種目の中で最も使用者が多かった自転車競技では、独自ルールとして2019年3月1日より競技中の使用を禁止しました。
「トラマドール」を摂取することで疲労感などを抑え、体に過度な負担を与えるような使用方法で悪用されていたためと一部で報道されています。また使用することでめまい・ふらつきが生じ、落車のリスクがさらに高まるそうです。
トップレベルの選手が過去に上記の目的で「トラマドール」を使用し鬱症状になったという報告もあります。
禁止されるまでこのような状況もあったのかと考えるとかなりショッキングな出来事ですよね。
一つ気をつけないといけないのは、この成分の合剤が存在するということです。
「トラマドール」とアセトアミノフェンの合剤で、商品名はトラムセット配合錠(後発品はトアラセット配合錠)です。
薬はカタカナが多く、一文字違うだけでも全く違う薬の意味になってしまうことがあります。選手やスタッフの方にも『薬の名前ってややこしいよね』と度々言われます。
成分名と商品名の違いまで正しく把握している一般の方はなかなかいらっしゃらないのではないでしょうか?
注意喚起する際は「トラマドール」の単剤だけでなく合剤の存在も一緒に伝えてあげることが、アンチドーピングにおけるリスク管理の一つに繋がるのではないかと思います。
では本日はここまで。
かなり堅い話になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?
「トラマドール」について関心を持って欲しくて、何回も連呼してしまいました。
まだまだお伝えしきれていない情報もあるので、それはまた別の機会に。
かなり寒くなってきたので、風邪を引かぬよう暖かくしてお過ごしください。
以上、シトロンでした!
参考サイト:Part XIII Medical Rules (2019年1月14)