薬学×付箋ノートBOOK著者 くるみぱんの薬学ノートと日常メモ |
第20回「電解質その1」
身体にとって重要な役割を果たしている電解質。どのような原因で変動し、どのような症状が現れるのかまとめました。今回はナトリウムとカリウムについてです!
ナトリウム
細胞外液の主となる陽イオンです。身体の水分量や浸透圧の調節、神経伝達や筋収縮などを正常に機能させるために重要です。
低ナトリウム血症
多飲症など水分を摂りすぎてナトリウムの濃度が薄まってしまった場合や、下痢・嘔吐や利尿剤(特にチアジド系)によってナトリウムが必要以上に失われてしまったのに水だけで補おうとした場合に起こります。他にも心不全、肝疾患、腎疾患、SIADHなども原因となり得ます。
脳はナトリウム濃度の変化の影響を受けやすく、錯乱や反応の鈍化、頭痛、吐き気などの症状が現れます。さらに重症化すると筋痙攣や昏睡状態になってしまいます。軽症であれば、水分制限や原因薬剤の中止で十分治療効果がみられます。重度の低ナトリウム血症では高張食塩水などの補充が行われる場合もありますが、是正速度には注意が必要です。
高ナトリウム血症
発汗や下痢など水分の喪失量に対して摂取量が少ないときに引き起こされます。また、高血糖や尿崩症などによって起こる脱水も原因となることがあります。
主な症状は口渇で、他には頭痛や嘔吐、重症化すると意識障害や筋痙攣、昏睡が現れます。意識のある患者に対しては経口水分補給が効果的で、飲水できない状態の患者には静注による水分補給が望ましいです。
カリウム
細胞内液の主となる陽イオンです。ナトリウムと同じく、体液の浸透圧やさまざまな機能の調節に重要な役割を果たしています。特に心筋のはたらきに関わるため、適切な濃度を保たないと不整脈や心停止などの危険があります。
低カリウム血症
嘔吐や下痢で消化管から、クッシング症候群などの副腎疾患で腎臓から、大量のカリウムが喪失した場合や利尿剤を服用している場合に起こります。カリウムの摂取量が不足していることが原因の場合もありますが、緑黄色野菜や果物などに豊富に含まれているので、不足することはなかなかなありません。
カリウム値は軽度の低下では自覚症状に乏しく、3mEq/Lを切ると筋力低下によるさまざまな症状が現れます。例えば、痙攣、呼吸筋麻痺、麻痺性腸閉塞などです。治療は状態に応じて、カリウム製剤を経口投与もしくは静脈内投与します。
高カリウム血症
通常、過剰なカリウムは腎臓から排出されますが、急性腎障害などの腎疾患では十分に排出できず過剰になってしまうことがあります。他にも摂取量の増加や、腎排泄を阻害する薬剤の服用、熱傷などの細胞が壊れる疾患などいくつかの要因が重なることで起こります。軽度な場合の症状としては筋力低下などがありますが、重症化して不整脈が現れるまで無症状のことも多いとされています。
治療は、重症度に応じてポリスチレンスルホン酸ナトリウムやインスリン及びブドウ糖、β2作動薬吸入などの投与や血液透析が行われます。
今回はナトリウムとカリウムについてでした。次回は別の電解質について書いていきます!
※基準値は医療機関によって異なります。 今回は江口正信著『検査値ガイドブック第2版』(サイオ出版,2017年2月)を参考にしました。