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薬学×付箋ノートBOOK著者 くるみぱんの薬学ノートと日常メモ

第27回「脂質異常症の治療② フィブラート系」

前回の記事で動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年をもとに治療の全体像とスタチン系についてまとめました。今回はフィブラート系について書いていきます。

フィブラート系の立ち位置

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年においてフィブラート系は高TG血症への効果とHDLコレステロールを増加させる効果が認められています。ざっくりとしたイメージでは、前回書いたスタチン系がLDLコレステロールに、フィブラート系が中性脂肪に効果的と言えます。

スタチン系との併用については何度も添付文書の改訂が行われており、1994年「慎重投与」→1999年3月「禁忌」→1999年6月「原則禁忌」→2018年「慎重投与」となっています。併用することで急激な腎機能の悪化を伴う横紋筋融解症のリスクが高まるため、腎機能低下の患者にスタチン系と併用するときは定期的に腎機能の検査を実施し、数値や自覚症状から腎機能悪化と判断された場合は直ちに投与を中止します。

ベザフィブラート(先発:ベザトールSR)

1日2回朝夕食後に服用するタイプです。基本的には1回200mgですが、腎機能障害のある患者や高齢者では適宜減量します。

主に腎排泄されるため、腎機能には注意が必要です。特徴としては、徐放コーティングされていることが挙げられます。そのため粉砕や半割はできず、服用の際は噛み砕かないようにします。また、肝細胞保護作用と胆汁分泌促進作用があることから、原発性胆汁性胆管炎(PBC)の治療に使用されることもあります。これは適応外ですが、ウルソとの併用でPBCの予後改善が期待できます。

 

【腎機能】透析や腎不全、血清クレアチニン値2.0mg/dL以上の場合は禁忌。また、血清クレアチニン値1.5mg/dLを超える場合は慎重投与となっており、1日1回200mgへ減量。

フェノフィブラート(先発:トライコア、リピディル)

1日1回106.6〜160mgを食後に服用するタイプです。53.3mgと80mgの錠剤があり、1日最大160mgです。以前はカプセルの67mg(=53.3mg錠)と100mg(=80mg錠)がありましたが、昨年販売終了が発表されています。

ベザフィブラート同様、腎排泄のため腎機能にはもちろん注意が必要ですが、肝機能や胆嚢疾患にも気をつけなければならない薬剤です。特徴として、尿酸トランスポーター(URAT1)阻害作用も持っているため、尿酸の再吸収が抑制され、尿酸値も低下させられます。高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(日本痛風・核酸代謝学会)においても高尿酸血症と高TG血症を合併している患者に有用とされています。

 

【腎機能】血清クレアチニン値2.5mg/dL以上もしくはクレアチニンクリアランス40mL/min未満の場合は禁忌。また、血清クレアチニン値が1.5mg/dL以上2.5mg/dL未満もしくはクレアチニンクリアランスが40mL/min以上60mL/minの場合、53.3mgから投与を開始するか投与間隔を延長。

【肝機能】肝障害を悪化させる可能性があるため、肝障害のある患者には禁忌。また、肝機能検査値に異常のある場合や肝障害の既往歴がある場合、53.3mgから開始。さらに、肝機能検査を投与開始3ヶ月後までは毎月、その後は3ヶ月ごとに実施。

クロフィブラート(先発:なし)

1日2〜3回服用するタイプです。先発品はすでに販売終了しており、2023年2月現在はクロフィブラートカプセル250mg「ツルハラ」のみの販売で、後発品には該当しません。胆石形成の副作用があるため、胆石のある患者やその既往のある患者には禁忌です。

ペマフィブラート(先発:パルモディア)

1日 2回服用のタイプでフィブラート系の中で1番新しい薬剤です。食事の影響はないため、食前や食後の指定はありません。基本的に1回0.1mgですが、1日最大0.4mg(1回0.2mg×1日 2回)まで増量可能です。従来のフィブラート系は非選択的にPPARに作用していましたが、パルモディアはPPARα選択的です。そして従来のものと比較してTG低下作用やHDLコレステロール増加作用が強いとされています。注意点として、錠剤を分割した場合、湿気を避けて保管し4ヶ月以内に使用しなければなりません。

 

【腎機能】eGFRが30mL/min/1.73㎡未満の場合、低用量から投与開始もしくは投与間隔を延長し、1日最大0.2mgまで。

※以前は高度腎機能障害のある場合に禁忌でしたが、2022年10月に改訂されています。

【肝機能】重篤な肝障害、Child-Pugh分類BまたはCの肝硬変のある患者には禁忌。また、Child-Pugh分類Aの肝硬変などの肝障害やその既往歴がある場合、必要に応じて減量。

 

以上、フィブラート系についてでした。次回で脂質異常症ラストの予定です!