薬学×付箋ノートBOOK著者 くるみぱんの薬学ノートと日常メモ |
第31回「今年も大流行の兆しが! RSウイルス感染症」
秋から冬にかけて流行することの多いRSウイルスですが、夏をピークに大流行した2021年と同じペースで今年も今の時期から患者が増えています。どのような感染症なのかまとめました。
概要
主に乳幼児に感染する呼吸器系の感染症です。1歳になるまでに50~70%の乳幼児が感染し、3歳になるまでにほとんどの小児が1度は感染するうえに、再感染も多いです。
成人にも感染することはありますが、感冒症状のみで改善する場合が多く、重症化することは少ないです。もともと11月〜1月ごろを中心に流行していましたが、近年は夏から流行が始まることも増えています。
原因ウイルス
RSウイルスが原因となります。RSウイルスは大きく分けてA型とB型の2つがあり、A型の方が重症化しやすいと言われています。
感染経路は咳やくしゃみによる飛沫感染と接触感染です。環境中では比較的不安定なウイルスではあるものの、感染力が非常に強く、ドアノブやテーブル、おもちゃなどの表面では数時間生存し、それに触れた手で目や口、鼻などの粘膜を触ることで接触感染が起こります。
症状
2〜8日間(多くは4〜6日間)の潜伏期間ののち、発熱・鼻汁・咳などの風邪のような症状が現れます。これは鼻や喉といった上気道で感染している状態です。このまま数日で回復する場合も多いですが、感染者のうち25〜40%ほどが細気管支炎や肺炎になってしまいます。咳の悪化や呼吸困難は気管支や肺など下気道への広がりが考えられ、要注意な状態です。特に生後数週間〜数ヶ月の乳幼児や心肺系の疾患、低出生体重などは重症化のリスクがあります。
治療
RSウイルス感染症に対しての特異的な治療はなく対症療法のみになります。肺炎等になり入院した場合は、酸素投与や輸液、呼吸管理などの支持療法が行われます。
予防
予防のためのワクチンの研究はされているものの、開発には至っていません。現在予防として使用されているのはモノクローナル抗体製剤であるパリビズマブです。早産児と慢性肺疾患を有する小児に対して、流行開始前から15mg/kgを月1回筋注することで予防効果が期待できます。
また、一般的な感染症予防である手洗いうがいやアルコール消毒、感染者との密接を避けることも大切です。子供が触れた場所やおもちゃなどの消毒も効果的です。
保育園・学校など
学校で予防すべき伝染病には該当していません。登園・登校の目安として「咳などが安定した後、全身状態のよい者は登校(園)可能であるが、手洗いを励行する」とされています。
調べてみて
25〜40%が下気道疾患になってしまうRSウイルス。大人の場合、軽い風邪症状のみでRSウイルスと気がつかないかもしれません。小さな子供がいる家庭では充分注意したいですね。
【参考】
・RSウイルス感染症とは(国立感染症研究所)
・RSウイルス感染症の流行状況(東京都感染症情報センター)
・学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説(日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会 2023年5月改訂版)
・ 日本におけるパリビズマブの使用に関するコンセンサスガイドライン(日本小児科学会,2019年5月)