第13回 インフレリスクについて解説!
木元 貴祥(きもと たかよし)さん
パスメド ‒PASS MED‒ 代表 https://passmed.co.jp/
1986年生まれ 滋賀県出身
日本イーライリリーのMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の薬理学講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。
現在はSkypeを利用した薬学生向けのオンライン家庭教師や看護師国家試験対策予備校講師業の他、下記サイトの運営を行っている。
●運営サイト
- 新薬情報オンライン:https://passmed.co.jp/di/
新薬の作用機序等を分かりやすく解説。月間アクセス数10万PVの人気サイト - メディカルタックス:https://passmed.co.jp/setsuzei/
医療スタッフ向けの節税・資産運用について税理士・薬剤師・FPが解説 - パスメド薬学部試験対策室:https://passmed.co.jp/pharmacy/
無料の演習問題2000題以上。薬学生向け、試験対策サイト
●著書
- 薬剤師国家試験の病単、薬剤師国家試験のための薬単、同効薬おさらい帳
- 薬剤師になったら最初に読みたい 大学で教えてくれなかったお金の本
株式会社PASS MED(パスメド)の木元 貴祥(きもと たかよし)
です!
過ごしやすい時期になってきましたね。私事ですが、2022年8月に「薬剤師になったら最初に読みたい 大学では教えてくれなかったお金の本(通称:薬マネ)」を出版しました! お金のことは早い時期に知っている方が何かと得をしますので、ぜひ若手薬剤師に読んでいただきたい一冊です。
さて、最近はいろいろな物の値段が上がっていますよね。いわゆる、物価上昇、インフレ、と呼ばれるものです。今回はインフレに伴うリスクについて紹介するとともに、薬マネの紹介も少しさせていただきます。
インフレ・デフレとは
インフレ、デフレ……最近はよく聞く言葉ですよね。インフレというのは、正式には「インフレーション」といい、「物の値段(物価)が上昇する現象」をさします。
物価が上昇と聞くと、「そんなの嫌だ!」と思われるかもしれませんが、通常、インフレが起きているということは「物の値段が高くても売れる社会」が形成されており、経済が潤っているということでもあります。
インフレ発生の流れ
①景気回復
②物が売れる(物の需要が高まる)
③企業の業績が回復して社員に還元される(給与が上がる)
④ 物の需要が高まるから物価が上がるが、給与も上がっているため物は売れる
⑤お金の需要が増えるため銀行の金利も上がる
⑥①に戻る
このようなサイクルを繰り返すことで景気回復と物価上昇が続きます。
反対に、なかなか物が売れないためにどんどん物価が安くなっていく現象がデフレーション、略して「デフレ」ですね。物価の下落は企業収益の縮小化や給与の減少を招き、基本的には生じてほしくない現象です。
最近のインフレの実態
日本はバブル崩壊後、長らく不景気が続くデフレ社会でした。そこで日本政府が2014年にデフレ脱却・景気回復を目的に「物価上昇率2%」を目標に掲げたのです。
しかし、物価上昇率2%を達成したのは今まででたったの一度。2014年の消費税増税(5% →8%)のときだけなのです。
さらに、近年の物価上昇は、
●消費税増税の影響
●原材料の高騰
●運送費の高騰
●物が売れず、企業利益向上のための値上げ
が主になっているため、市場においてお金の需要が高まっているわけでも社会全体で給与が上がっているわけでもありません。もちろん、景気も回復しているとは言い難いでしょう。
インフレリスクとは?
では、本題の「インフレリスク」の説明です。インフレリスクとは、物価上昇により「お金の価値が落ちる」ことをいいます。
例えば、毎年の物価上昇率を2%と仮定した場合、今年100円で買えたケーキが、来年は102円(100円×1.02)に値上がりしてしまいます。そうすると、お金の価値は100÷102≒0.98=98%と1年で「お金の価値が2%落ちる」というのと同じ意味となります。
これが続いてしまうと、額面の金額は変わらずとも、どんどんとお金の価値が下がっていくのです……!
銀行預金といえば絶対的な安心感があると思いますが、本当に銀行預金は絶対に安心と言ってしまって良いのでしょうか?
●物価上昇率は2%/ 年
●銀行預金の金利を0.01%/ 年
●銀行に100万円を預金
上記の条件で10年が経過したとします。
すると、額面上は約100万800円となるのですが、物価上昇率との乖離を踏まえ、実際の価値に換算すると、約82万円となります。このように、置いておくだけ(預金しておくだけ)でお金の価値が下がることを「インフレリスク」と呼んでいます。
インフレリスクは考慮すべきか?
インフレの指標となる代表的なものとして「コアコアCPI」があります。これは消費者物価指数(CPI)のうち、生鮮食品とエネルギーを除いた物価指数で、総務省が毎月公表しています。2020年7月以降、直近ではずっとマイナスでしたが、2022年4月にようやくプラスに転じました(+0.8%)。つまり、そこまで急速なインフレは起こっていないと言えるでしょう。
今後の日本は超高齢者社会の加速、生産年齢人口の減少を迎えることから、景気回復や消費の活性化に伴うインフレは進みにくいのではないかと考えています。
ただし、いつどうなるかは分からないため、額面での減少リスクのない「銀行預金」と、物価上昇率などと連動した「金融資産(株式や投資信託などの有価証券)」をバランスよく保有することが大切です。具体的には、税制の優遇があるiDeCo(第2回)やNISA(第8回、第9回)から始めていくのが得策でしょう。
薬剤師とインフレリスク
もしも、薬剤師の給与が今後なかなか上昇しないようなら、それも「インフレリスクに晒されている」と言えます。これからは薬剤師飽和の時代です。
「薬剤師になれば定年まで給料は右肩上がりで退職金もいっぱいもらえる」という時代は終わりました。それに伴い、薬剤師の働き方も多様化しています。若い薬剤師ならインフレリスクのことはもちろん、将来の働き方・稼ぎ方まで考えておく必要があるのです。
そんな若手薬剤師の参考になればという想いから出版したのが「薬剤師になったら最初に読みたい 大学では教えてくれなかったお金の本(通称:薬マネ)」です。
薬剤師に関連するさまざまなお金の話を、薬剤師・FP 資格を有する2名と税理士と共に書き上げました。お金に関する事前アンケート調査(薬剤師674名)も実施し、お金の悩みを汲み取ったうえで執筆しています。また、さまざまな働き方をしている薬剤師16名のコラムも掲載しているため、今後の働き方の参考になると考えています。
詳しくは以下で紹介しているので、ご覧いただけると嬉しいです!
メディカルタックス
薬マネ:薬剤師になったら最初に読みたい
お金の本の評判・レビュー
https://passmed.co.jp/setsuzei/yaku-money
●タイトル
薬剤師になったら最初に読みたい
大学では教えてくれなかったおマネー金の本
●編著:メディカルタックス/著
●発売日:2022年8月30日
●出版社:株式会社じほう
●定価:2,500円(税抜き)
●ページ数:240ページ
●ISBN:9784840754477
まとめ
●物価の上昇をインフレと言い、通常は景気回復の指標となる
●日本政府は継続したインフレを目指している
●銀行預金はインフレリスクとなり得る
●今後数十年で大きなインフレが起こることは考えにくく、銀行預金とその他の資産をバランス良く保有することが大切
●若手薬剤師は薬マネを手に取って、お金の勉強をしておこう
インフレ、デフレ、普段耳にするものの、あまり意識することは少ないかもしれません。しかし、知らないと確実にお金がリスクに晒されているのです。銀行預金ももちろん大切ですが、将来のために少額でもいいのでiDeCoやNISAで資産形成をスタートしてみてください。
出版した薬マネでは、薬剤師ならではの上手な資産形成・資産切り崩しの方法も解説しています。
あなたの薬剤師人生に少しでも役立てることを切に願っています!
また次回お会いしましょう。
本記事の詳しい解説は以下で配信中!
●メディカルタックス : インフレリスクに踊らされたらアカン! 失敗しないiDeCo/保険選びのために
https://passmed.co.jp/setsuzei/difference-income-resident-tax